
AI によって生成された児童の性的虐待コンテンツ(CSAM):脅威の一歩先を行く

デジタル捜査は急速に進化していますが、新たな脅威はその規模と性質の両面で、経験豊富な法執行機関の専門家でさえ対応能力の限界を超えつつあります。Internet Watch Foundation によると、児童の性的虐待コンテンツに関する報告件数は 31 万 2,000 件を超え、過去最高を記録しました。また、AI によって生成された虐待コンテンツも急増し、写真のようにリアルな動画が 1 年で 26,000 % 以上増加しています。犯罪者が AI を使用して露骨な虐待コンテンツを生成できるようになった今、法執行機関の経験豊富な専門家でさえも、従来の専門知識や捜査規範が通用しない事件に直面しています。
たとえば、10 代の少女が、自分で投稿した自分の写真の悪用を通報するケースが考えられます。投稿した写真自体は不適切なものではありません。しかし、少女の顔が、性的行為に及んでいる別の人物の体と合成されたのです。AI により、少女の生活は生き地獄と化しています。
法執行機関にとって、この例はデジタルフォレンジックの新時代を象徴しています。そこでは、現実と作り物の境界があいまいになり、従来の捜査手法が前例のない課題に直面しています。AI によって生成された児童の性的虐待コンテンツ(CSAM)がもたらす影響は、プライバシーやセキュリティに関して、また、正義の追求に向けたテクノロジーの倫理的な展開に関しても、奥深い問いを投げかけてきます。どうすれば、誠実さ、有効性、配慮を保ちながらこの状況を打開できるのでしょうか。
フォレンジックの視点からディープフェイク画像を識別する
この状況は、すでに仮定ではなく現実のものになっています。Cellebrite の Heather Mahalik Barnhart が『Forensic Magazine』で概説するように、「フロリダ州では、10 代の若者 2 人が、AI を利用して同級生の性的に露骨な画像を生成したとして告訴され、刑事罰に問われています」。捜査官の観点から見ると、これはいくつかの課題を投げかける可能性があります。
- 写真が改変されている場合、モバイルデバイスに保存されている膨大な画像の中から、どうやってそれを見つければよいのでしょうか。ハッシュマッチングは使用できず、手作業でスクロールするにはかなりの時間がかかります。
- 犯罪は行われたのでしょうか。
- この問題に対処するため、またはこの新たな脅威に対応する捜査官を支援するために、何か行われているのでしょうか。
捜査のために何ができるのかを理解する
何千、何十万、あるいは何百万もの画像をより分けて調べるのは大変な作業です。ハッシュマッチングを利用できないとなると、ただでさえ難易度の高い試みが、一層手ごわいものになってしまいます。幸い、Cellebrite Pathfinder のようなツールにより、捜査官は特定の人物をターゲットに検索したり、独自のビジュアル検索を構築したりすることができます。この膨大な演算能力を活用することで、時間を節約し、捜査効率を大幅に高めることができます。前述の例では、捜査官は被疑者のデバイスを入手した後、被害者の写真をアップロードして Pathfinder の Facial Similarity を使用し、Image Analytics により、ハッシュ値を照合することなく被害者に似た顔を検索できます。
さらに、Heather Mahalik Barnhart や Jared Barnhart などの専門家が提供するリソースを通じて、Cellebrite の専門知識を活用することもできます。この 2 人は最近、AI 画像と本物の画像を見分けるうえで重要な手掛かりをいくつか発見しました。どんなに小さなパターンでも、正しい方向へ導いてくれる可能性があります。Heather は次のように述べています。「一般に、AI によって生成された画像のファイルサイズは小さくなります。それだけで AI 画像を識別することはできませんが、それでも、その方向で調べ始めるための良い指標にはなります」
管轄の範囲内でできることを把握する
米国の一部の州では、この問題に先手を打とうとしていますが、被害者の特定を義務付けている州や、「当該ビジュアル表現では実際には未成年者が描写されていなかった」という積極的抗弁を認めている州もあります。前回の記事では、さまざまな政府機関がこの問題をどのように扱っているのかを取り上げました。
端的に言えば、検察官、地方議員、その他の政策立案者との対話が、このような捜査の行方とその後の処罰を方向付けることになりそうです。繰り返しになりますが、NCMEC が運営する「Take it Down」というサービスは予防策として利用でき、そのような生成コンテンツの拡散を抑えるうえでコミュニティを支援します。
Cellebrite の取り組み
以前にも触れたとおり、Cellebrite は、このような問題に正面から取り組める優秀な人材を擁しています。Heather は次のように説明します。「Android と iOS のテストデバイスで、さまざまな AI 生成アプリケーションを使用してディープフェイク画像をいくつか作成します。次に、従来の方法でも同じ種類の画像を取得します。そして、それらを並べ、画像の EXIF や、画像アーティファクトのメタデータを追跡するデータベースを細かく分析していきます」
関連資料:「Fake or Real? Detecting AI Images from a Forensic Lens」(偽造?本物?フォレンジックの視点からディープフェイク画像を検出する)
CSAM に挑むには、多面的なアプローチが必要です。捜査は小さな要素の集まりですが、アプローチの 1 つが欠けたり、軽視されたりするだけでも、捜査が危険にさらされる可能性があります。管轄地域の微妙な違いを理解することは、適切な手掛かりを迅速に見つける適切な捜査ソリューションを確保することと同様に重要です。
高度な分析に加えて、Cellebrite ではワークフローに全米行方不明・被搾取児童センター(NCMEC)のデータを直接統合しているため、捜査官は既知の CSAM を迅速に特定し、より効率的に事件の優先順位付けを行うことができます。また、Cellebrite の Pathfinder のようなツールは、対象を絞った顔の類似性分析やその他の視覚的分析を可能にして、捜査官の能力を強化します。犯罪者間のつながりをマッピングし、CSAM が拡散される経路を追跡することもできます。立法者、検察官、スペシャリストなど、地域の専門家と率直に対話することで、未知の事態により適切に備えることができます。これは、このような事件に積極的に対応することと同じくらい重要なことです。
各機関が悪意ある AI の使用の脅威に対する備えとしてどのような手段をとっているとしても、Cellebrite は先頭に立ち、デジタル捜査における AI の責任ある使用を推進していきます。Cellebrite は、イノベーションを安全や説明責任への取り組みと組み合わせることで、捜査官が AI を活用して正義の実現を加速させ、CSAM などの犯罪により効果的に立ち向かえるように支援しています。AI が捜査において戦略的優位性をどのように引き出すのかについて、ご確認ください。
執筆者について

William Arnold は Cellebrite の導入エンジニアです。デジタルインテリジェンスプラットフォームの導入と運用に重点的に取り組んでいます。10 年近くにわたって法執行機関で実務経験を積んでおり、デジタル証拠を重視して、児童搾取やその他の重大犯罪の捜査に取り組みました。フォレンジック分析における AI の役割の進化や、CSAM 関連の捜査における AI の使用に伴う課題に関する見解に、その経歴が反映されています。